はじめに
肱川流域の山並みが連なる西予市野村町は、「シルクの町」として国内外で高い評価を得ています。
明治初期より蚕糸業が始まり、優れた品質の生糸が生産されてきました。
山深い地域でありますが、養蚕に適した場所であったようです。
このような地にある、西予野村シルク博物館は、現代にも繋がっている生糸生産の歴史や文化を知ることができる博物館です。
西予の養蚕業
明治初期より始まった蚕糸業は、この地域が桑園に適した地であったことから急速に普及していきました。
大正時代には1,000戸以上の農家が養蚕を行うまでになっています。
恵まれた風土の中で育まれた繭や高度な製糸技術によって生産された生糸は「カメリア」(白椿)のブランドで取引されました。
生糸は品質の高さから、伊勢神宮式年遷宮の御用生糸やエリザベス女王の戴冠式にあたっての式典用御料糸の特別注文を受けたりしています。
「カメリア」ブランドの純白の生糸(2反分)
西予野村シルク博物館
1994(平成6)年、歴史のある西予市の蚕糸業を広く知ってもらうために野村シルク博物館が設立されました。
養蚕の道具
蚕の模型
繭のかご
織機
着物展示
絹織物館
野村シルク博物館の隣には、実際に生糸や絹織物を生産している絹織物館があります。
繭から生糸を生産する工程や、絹織物を織っている現場を見学することができました。
博物館と同時に設立された絹織物館では、「伊予生糸」の生産に取り組んでいます。
ここで生産された「伊予生糸」は、その品質から高い評価を得ています。
2016(平成28)年には、地域の農林水産物の名称を知的財産として国が保護するために地理的表示(GI)として登録されました。
製糸の機械
機織りの実演
おわりに
山間の静かな地域で生産されてきた生糸は国内外で評価され、この地域の発展に大きく寄与してきました。
伝統を受け継ぎ、高い品質の生糸の生産を継続していることは、この地域の人々の故郷を大切に思う心の強さを物語っていると思います。
いつまでも「伊予生糸」が続いていくことを願いました。
追記:野村ダム
野村シルク博物館は野村ダムのほとりに位置しています。
肱川上流に1982年に完成した、ダム自体の力で無図の力を支える重力式コンクリートダムです。
下流域の洪水防止、農業用・水道用のための治水利水を目的としています。
ダムによって出現した湖は、霧の多い地勢から朝霧湖と命名されました。
ダムカード