はじめに
世界的な建築家である丹下健三が設計し、香川県に現存している2つの建築物を見に行きました。
丹下健三は、戦後に広島平和記念資料館、代々木体育館、現東京都庁、山梨文化会館、フジテレビ本社ビルといった数々の名建築を残している人物です。
香川県には、今も現役で使用されている香川県庁、残念ながら老朽化のために使用中止となっている旧香川県立体育館の2つがあります。
どちらもユニークな外観で、特徴のある建物でした。
手前が東館で奥が本館
香川県庁
丹下健三設計の香川県庁舎東館は、国の重要文化財に指定されています。
高さ43mの県庁舎東館は1958(昭和33)年に完成し、もともと県庁舎本館として使われていましたが、隣に高さ113mの本館が完成したことで、東館の名前に変わりました。
県庁舎の南西側
県庁舎は柱や梁の構造、バルコニーなど、日本の伝統を巧みに表現しているデザインであることや、1階ロビーを県民に開かれた空間とする手法などが評価され、歴史的価値があるとして国の重要文化財に指定されました。
県庁舎の南側
正面玄関
開放的な1階ロビー
ロビーの壁画
1階にある壁画は猪熊弦一郎によるもので、「日本のあるべき民主主義は茶の精神であり、茶の精神は和敬清寂にあり」ということを、太陽と月で表現したものだそうです。
ロビーの調度品
受付カウンターや椅子などの家具類も優れたデザインであり、歴史的価値が高いと評価されました。
巨大な石を使った受付カウンター
ロビーのイスと机
南庭は伝統的な日本の庭になっています。
旧香川県立体育館
1964(昭和39)年に完成した鉄筋コンクリート造りで、船の形を模した独特の外観を持つ体育館です。
東京の代々木体育館の原型ともいわれているようで、これが体育館?と思ってしまう形状です。老朽化によって閉鎖されており、もしかしたら取り壊しになってしまうかもしれないようです。
何とか、歴史的建築物として、後世に残ってほしいものです。
丹下健三とは
生まれたのは大阪府堺市ですが、小学校、旧制中学校を父親の出身地である愛媛県今治市で過ごしているので、四国にも縁があったようです。
旧制広島高校に進学したとき、ル・コルビュジエの記事に感銘を受けて建築家を志したとされ、1935年(昭和10年)に東京帝国大学工学部建築科に入学しました。
そして戦後に数々の建築設計を手がけています。
おわりに
世界的な建築家によって香川県の建物が作られたのは、当時の金子正則知事を旧制丸亀中学校の先輩である猪熊弦一郎が丹下健三に引き合わせたことによります。
「香川の象徴となる建築を」求めた知事の要請に、丹下健三が見事に応えた作品でした。