はじめに
徳島で最後の札所である薬王寺は、厄除けの寺としても有名です。
厄除けの階段、33段の女厄除坂、42段の男厄除坂、61段の還暦坂があります。
お遍路さんだけでなく、厄年になった老若男女が、無病息災を願ってお参りにやって来ています。
それぞれの厄坂には、参拝者によって厄除け祈願のための1円玉が1段1段に置かれていました。
お寺は、山の斜面に張り付くように伽藍が並び立ち、境内の高台からは日和佐の町を一望することができる風光明媚な場所にあります。
境内
境内案内図
仁王門
本堂
本尊は薬師如来さまです。
本堂の裏には秘仏の「後向き薬師」さまが祀られています。
大師堂
肺大師
弘法大師をお祀りしている小さなお堂の下に、ラジウムを含んだ水が湧き出ていて、肺病などに効能があるといわれています。本堂の横にありました。
魚籃観音立像
中国の唐代に、仏が美しい乙女の姿で魚を売りながら仏法を広めたとされる故事にちなんでいます。漁業関係者の信仰が厚い観音さまです。
瑜祇塔(ゆぎとう)
1963(昭和38)年に建立された、高さ29mの極彩色の塔です。本堂よりも高所にあるので、麓から見るとひときわ目立っています。
五智如来さまが祀られており、薬師如来さまと縁を結ぶ戒壇めぐりもできます。
香炉・石臼
御真言を唱えながら臼の中の香を年の数だけ杵でつくと、無病延命が得られるそうです。
随求(ずいぐい)の鐘
年の数だけこの鐘を鳴らすと厄が落ちるといわれています。
縁起
寺伝によると、聖武天皇の勅願によって行基が創建し、9世紀初めに、平城上皇の勅命によって空海(弘法大師)が薬師如来像を彫って再興したとされています。
12世紀末、火災によって伽藍を焼失してしまいました。この時に本尊は奥之院のある玉厨子山に飛んで焼失を逃れたという伝説があります。
その後、後醍醐天皇により再建されて本尊が新たに彫られましたが、飛んで行った元の本尊が帰ってきて、後ろ向きに厨子に入って自ら扉を閉じたそうです。
帰って来た元の本尊は「後向き薬師」といわれて、以来、秘仏となりました。
このため薬王寺には本尊が二体あることになっています。
歴代天皇も薬王寺での厄除け祈願のために勅使を下向させるなどして厚く信仰されました。
承久の乱(1221年)の時、後鳥羽上皇に連座して土御門上皇が土佐に配流されましたが、後に阿波に移される際に薬王寺に滞留されています。
記念碑
お寺にゆかりのある、吉川英治「鳴門秘帖」司馬遼太郎「空海の風景」と刻まれた石碑があります。
仁王門から上がって、女厄坂への通路にありました。
おわりに
厄除け根本祈願所として、全国にその名を知られているお寺です。
この薬王寺から次の高知県室戸にある24番札所最御崎寺(ほつみさきじ)までは74,5kmあり、海岸沿いの道をひたすら進んで行きます。
歩きのお遍路さんにとっては、厳しい道のりとなります。