狭い田んぼでコメ作り
今年は、コメが毎日のようにテレビで話題になっていますね。
米作の大規模化や省力化がテレビでよく紹介されています。
生産効率だけを考えれば、わずかな田んぼで「そこまでして何でコメを作っているの?」という疑問が湧いてくるのは当然でしょう。
しかし日本は地形的に広大な田んぼを確保できるような所ばかりではないですね。
わたしの地域も広大な田んぼを確保できるような場所ではありません。
それでも昔から何とか工夫をしながら米作りを行ってきています。
先人が行ってきたことを(先人と言っても父親母親とか祖父母の顔だけしか分かりません、それより前のご先祖様は、お墓でしか知りません)私の代で終わらせてしまうのもどうかと思ってしまいます。
それに米作りには、大量の水が必要です。
水を確保するためには、水を田んぼまで引いてくるための長い水路が不可欠です。
この水路を地域の方々が協力して維持管理しています。
昔からの地域のたゆまない努力によって、コメ作りが成り立っているということです。
お祭りとか、地域の行事ごとも米作りがあってこそです。
理由はいろいろ考えられますが、やっぱり夏に、田んぼが緑のじゅうたんのようになっている風景は残しておきたいですよね。
それに、私だけかもしれませんが、田んぼが荒れているのを見るのは、少し寂しく思ってしまいます。
「今の時代に」と笑われるかもしれませんが、私の場合は先祖代々続いた自分の田んぼを守って、次の代につなげていきたい、ということに尽きるという気がします。
はじめに
毎年、全部あわせて3反半ほど、4枚ある田んぼで米作りをしています。
父がやっていた米作りを引き継いで、20年ぐらいになるでしょうか。
勤めに行きながら、兼業で細々とやっていました。
今年は、6月15日に田植えをしました。
3反半、4枚の田んぼでの田植えです。
農協から田植え用の苗を買っています
米の品種は「ヒノヒカリ」で、農協が育てた箱に植わっている緑化苗を買っています。
少し小さい苗なので、家で1週間ほど水をたっぷりと撒いて育てます。
農協から持って来て、すぐに植えることのできる苗もあるのですが、1週間ほど家で育てる苗の方が値段が安いので、こちらを使っています。
コストの問題です。
両親は種から育てていたので、試しに一度、種から育てたことがあるのですが、生育にばらつきが出たりしてうまくいかず、手間もかかるので農協から苗を買うようになりました。
ウチだけでなく、コメ農家の高齢化・兼業化に伴って、省力化が進んでいます。
田植え前の準備:代かき
田んぼに水を入れて、代かきをしました。
代かきというのは田植えをするために、トラクターで田んぼの土をぐちゃぐちゃにかき混ぜてドロドロにする作業のことです。
泥のようになった田んぼは表面が平らになり苗を植えやすくなります。
昔は、はしごを引いて表面を平らにしていましたが、トラクターのお蔭でそれはしていません。
トラクターによって省力化はされているのですが、結構、時間はかかります。
トラクターでの踏み固め
一番、時間がかかるのは、田んぼの下手から水が漏れ落ちないようにトラクターで踏み固める作業です。
水が水路から入ってきて田んぼに溜まっていかなければならないのですが、田んぼの下手(しもて)からモグラが穴を開けたりしていて、水が漏れてしまいます。
そのため田んぼの下手をトラクターで行ったり来たりして踏み固めるのです。
ミミズが這っているぐらいのスピードでトロトロとやっています。
これが一段落してから、縦横にトラクターでかき混ぜていきます。
田んぼで獲物を狙うサギ
田んぼをかき混ぜていると、たくさんの鳥がエサを求めてやってきます。
ツバメ・スズメ・サギが田んぼの水に浮かんでいるカエルやミミズ、虫をついばんでいました。
作業をしながら、肌で自然を感じる瞬間です。
代かきをしてから2日ぐらいすると、泥が沈んで落ち着くので、それから田植えをします。
苗に殺菌剤をふりかけ
まずは苗に、いもち病などの予防のための殺菌剤をふりかけておきます。
その後、田植え機の後ろに苗箱から苗を取り出してセットします。
田植え機
田植え機は4条植なので、初めに横に4箱、縦に2箱分の苗をセットしておきます。
植えていく都度、補充することになります。
田植え
やっと田植えになりました。
10月に収穫する「ヒノヒカリ」を植えます。
田植え機に恐る恐るエンジンをかけます。いつも緊張の時です。
というのも、我が家の田植え機は父親が退職ごろに買ったもので、40年は経っていようかという骨とう品で、まだ動いているのが不思議なほどの代物です。
1年に1度の田植えの時にしか動かさないので、実質的な稼働日数はたかが知れています。
なんとか無事にエンジンがかかってホッとしました。
田植えは稲刈りと違って、雨が降っていても、田植えは出来ます。
しかし、雨が降ると合羽を着るので蒸れてベトベトするし、晴れると日焼けがひどくなりヒリヒリします。
小雨天気でも、日焼けがひどくなるので、日焼け止めクリームを塗ってないとひどい目にあいます。
今年も田植えが始まりますが、出来たら雨の降らない程度に空に雲がかかって「傘」の代わりになるような曇りのお天気になって欲しいものです。
田植えルック
麦わら帽子に長そでシャツ・長靴といった典型的な農家のおっさんのいで立ちで、田植えをしています。
まっすぐに田植えをしたい
いざ植え始めると、田んぼの中が微妙に凸凹しているのでハンドルを細かく動かしなが
らまっすぐに植えるように集中します。
まっすぐに植えた方が稲刈りの時に刈り取りやすいからです。
出来るだけ、まっすぐになるように植えようとはするのですが、これがなかなかうまくいきません。
まっすぐ植えられずに曲がっていたり、苗の間が広かったり狭かったりしても、収穫には関係ないので、ほぼ自己満足の問題です。
コメ作りの経過
定年前
田んぼは4枚、全部あわせて3反半ほどあります。
私が定年になるまでは、1枚の1反の田んぼを「大瀬戸」、2枚で合計1反半の田んぼを「ヒノヒカリ」、9畝の田んぼを「コシヒカリ」にしていました。
「大瀬戸」という品種は主に酒米になるもので、背が低くて大風でも倒れにくく収量の多いお米です。
あれこれ作らずに1種類だけの品種にすればよいのですが、現役で仕事をしている時には、田植えにしろ、稲刈りにしろ、出来るだけ短時間でしなければなりません。
何日間にも渡って作業をすることが出来なかったからです。
そこで田植えも稲刈りも、時期を分散して行うようにしていました。
田植えは5月の初旬に「コシヒカリ」、6月中旬に「大瀬戸」と「ヒノヒカリ」を作付けします。
稲刈りは8月末に「コシヒカリ」、10月初めに「大瀬戸」、10月中旬に「ヒノヒカリ」といった具合です。
少しずつ別の品種を作付けすることで、作業が集中しないようにしていました。そうでないと本業に支障がでてしまいかねません。
兼業で、コメ作りを何とか維持するための工夫の一端です。
定年後
定年後、時間に余裕もできたので、「コシヒカリ」と「ヒノヒカリ」の2種類の作付けにしました。
この2種類は生育時期が異なるので、やはり、2回に分けて時期をずらして田植えをしていました。
しかし、今は「コシヒカリ」の作付けを止めて「ヒノヒカリ」だけにしています。
田んぼ4枚分で3反半ほどの面積です。
「コシヒカリ」もおいしいのですが、水田への水供給の関係で「ヒノヒカリ」を栽培しています。
味にそん色はないと思います。
おわりに
田植えがすべて終わって全体を眺めると、やっぱり間隔が広くなったり狭くなったりしていて、今年もうまくいかなかったと思ってしまいます。
でも、すぐに「終わったからまあいいか」と細かいことは気にしても仕方がないと思い直します。
何はともあれ、取り敢えず田植えが終わってやれやれです。