定年後の生活ブログ

定年後に行政書士となり、四国のことを発信しています

「銀の匙」と農業高校

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「銀の匙」

「銀の匙」(荒川弘)は農業高校御用達の漫画です。

都会育ちの農業とは縁もゆかりもない主人公の八軒勇吾が、農業高校に入学してからの成長の様子を描いています。

農業高校がどのような所かを知るには、うってつけの漫画だと思います。

第1巻から第15巻までのあらすじと実際の農業高校での私の体験を記します。

 

農業高校の話①「食肉処理場を見学させてもらったことがあります」

私は生徒たちと一緒に、実際に食肉解体処理場で牛の解体現場を見学させてもらったことがあります。

まさに命をいただく現場です。

飼育している家畜が生産者として、どのように解体処理されているかを知ることはとても重要です。

残念ながらこうした食肉の解体に関しては、偏見があるのではないでしょうか。

そのような偏見を無くすためにも食肉解体の実際を見てもらいたいと一般公開している処理場で見学させてもらいました。

処理場の畜魂碑に花を手向け、場内に案内してもらいます。

2階の見学場所から内部を一望でき、屠畜から解体までの一連の流れを見学できるようになっていました。

一連の作業は極めて効率的に何よりも衛生的に分担して行われています。

最後に私たちがよく見る枝肉になって、セリにかけられることになります。

印象に残ったことは、作業をされている方々の手際の良さと衛生に対する意識の高さでした。

たくさんの獣医さんがいて、これでもかというぐらい繰り返して検査をしています。

食肉処理に関わっている方々は、美味しいだけでなく、安心で安全なお肉を消費者に届けるためのプロフェッショナルなお仕事をされていると感じました。

家畜を屠ることに目をつむって、美味しい美味しいといって食べるだけでなく、このような食肉処理の実際を正しく知ることは大切なことではないでしょうか。

 

第1巻・・・春の巻

主人公の八軒が農業高校に入学した早々に、大きなカルチャーショックを受ける中で、自分の生き方について考えさせられる出来事が次々に起こってきます。

寮での生活、実習の様子、部活動など農業高校の実態に即した物語です。

農業高校では実習を大切にしています。頭だけでなく体を使って学ぶことが大切だからです。早速、八軒も実習を始めたようです。

鶏の当番実習では、卵がおしりから生まれてくることにショックを受けています。

豚の実習ではかわいい子ブタに名前を付けない理由とか子豚の去勢実習に驚いています。

また、クラスメートと一緒に行ったばんえい競馬でも、役に立たなくなった経済動物はすぐに食肉にされるという事実を知ります。

ゴールデンウィーク明けごろまでの、農業高校の様子がよく描かれていると思います。

 

第2巻・・・春から夏の巻

ゴミ捨て場で壊れたピザ窯を見つけ、八軒はみんなのためにピザを焼くことになります。

先生、先輩、同級生を巻き込んで、ピザ大会になりました。

本当に美味しいピザが出来上がり、やり切った八軒が何かをつかんだようでした。

夏休みになって、家に帰りたくない八軒はアキの家でアルバイトをすることとなりました。

近所に野球部の駒場の家があります。

父親が亡くなり、母親が一人で小規模な酪農を営みながら生活しているので、野球で成功することを目標に頑張っています。

多摩子の家にも遊びに行きました。

何百ヘクタールという大規模で近代的なファームで、他の農場との違いに唖然とします。

食料を生産している農業高校の様子がよく分かるとともに、酪農の実態や後継ぎ問題、命を頂いて食することについてなど、農業のありようについて考えさせられる内容でした。

 

第3巻 夏の巻

八軒が夏休みのアルバイト中に兄が訪ねてきます。

うまいラーメンの食材を求めて北海道を旅行中です。

早速、ラーメンを作ってみんなに振る舞ったのですが、これが不味いこと不味いこと。

夏休みが終わって2学期が始まりました。

赤ちゃん豚は驚くほど成長しています。

八軒は「殺して食べること」を考えて悩んでいます。

出荷すれば1頭、約3万円です。

悩んだ末に、処理された肉を買い取ることになりました。

そのことを聞いた先生は、生徒たちの希望者に屠畜のビデオを見せます。

  

農業高校の話②「子豚の出産に立ち会いました」

母豚は一度に10匹前後の子豚を出産します。

何時間もかけて少しずつ出てくるようです。

分娩は夜が多いそうなので係の先生もそれに合わせています。

子豚が生れ落ちると薄い膜で覆われているので、それを取り除きます。

牙が少し生えているので、ペンチでこれも切り取ります。

ある時、難産だったようで女性の先生が呼ばれました。

母豚の子宮に手を突っ込んで引っ張り出すためです。

男性の腕では大きすぎるので、豚に負担がかかりすぎるということで女性の方がよいそうです。

豚への種付けは人工授精で行っているようですが、雄豚にも交配させていました。

雄豚は体が大きくて迫力があります。

この雄豚が雌豚の背後からのしかかって交配させます。

専門の先生がサポートするのですが、なにせ大きな豚を相手ですので、一歩間違えると大けがに繋がる危険な作業です。

豚の交配とか出産を見ることは、なかなか出来ないことなのですが、直接見ることが出来てとても勉強になりました。

 

第4巻・・・ベーコン作り

出荷した豚が51キログラムの肉になって帰ってきました。

ベーコンに加工することになったのですが、ベーコンを燻す煙で知れ渡り、みんなで食ってしまいました。

そこに何故かお兄さんが出現し、親にも送ってやれと言われます。

送られた箱の中身には、説明も何にも入ってなくてお兄さんの電話で事情を知った母親が早速料理をして父親も食べました。

母からのメールでお父さんが「おいしかった」といっていることを知らされた八軒は、複雑な気持ちの中にもまんざらでもない表情を見せます。

先輩が引退し、馬術部の副部長に指名されます。

 

第5巻・・・駒場の野球とエゾノー祭準備

八軒は馬術部で新人戦に向けての本格的な練習を始めますが、うまく持ち馬を乗りこなせません。

そんな時に、アキが休みの日に地方の馬術大会に誘ってくれました。

そこで、馬のお蔭で競技が出来ていることを実感し、馬を自分に合わせるのではなく、自分を馬に合わせることを学びます。

 

第6巻・・・新人戦デビュー

馬術部の新人戦に出場することになった八軒は、緊張しすぎて意識が飛んでしまっているうちに、馬がうまくリードしてくれて無事終了しました。

部活に後ろ向きの気持ちしかなかった八軒でしたが、なぜか猛烈に悔しさがこみ上げてきます。

試合が終わり、再びエゾノー祭の準備に八軒は集中します。

やることが多すぎてとんでもないオーバーワークになっているにも拘らず、頑張っている八軒でした。

 

第7巻・・・過労で入院

検査の結果は、特に異常もなく学校に戻った時にはエゾノー祭は終わってしまっていました。

何もできてないことに忸怩たる思いの八軒でしたが、お客さんの「ありがとう」の言葉を聞いて、やってよかったと感動します。

野球部の秋季北海道大会が開幕となりベスト4にまで勝ち進みます。

9回裏ここを抑えれば決勝戦という場面で、リリーフに駒場が登場しますがエラーで逆転負けしてしまいました。

 

農業高校の話③「農業高校の文化祭」

農業高校の文化祭では栽培した作物とか加工食品の販売があります。

野菜や果物・草花や加工したみそや缶詰など、農業高校で生産したものを地域の方々のために販売します。

そのため、とてもたくさんの地域の方々が学校に来られます。

毎年のことなので地域の方々も楽しみにされておられるようです。

周りの道路はかなり渋滞するし、販売している品を買い求める人々で長い行列が出来るし、その日は生徒も先生方もてんてこ舞いの忙しさです。

八軒のようにあれやこれやと係を重複している生徒もいて準備の段階から忙しく働いています。

エゾノー祭のように、生徒はクラスごとに焼き鳥やポップコーン、金魚すくいといった屋台も出したりします。

やはり食べ物関係が多かったと思います。

農業高校にとっては地域の方々を巻き込んだ一大行事です。

 

第8巻・・・駒場の退学とアキの将来

食堂入り口の上に飾ってある「銀の匙」の意味を知ります。

外国の言い伝えでは「銀の匙を持って生まれた子供は生涯、食べるのに困らない」ということでした。

食いっぱぐれがないということでは、農家の子供はまさにそうだということです。

駒場の牧場が破産して離農することになってしまいました。駒場は迷惑を掛けられないといって、学校を辞めて働くことになりました。

八軒は自分の無力感にさいなまれます。

アキの家にとっても他人ごとではありません。後継ぎとして期待されているアキを交えて、経営会議が行われました。

そこでアキは長年の思いである、家業の酪農を継がずに馬の仕事をしたいという考えを親に話します。

それなら条件として大学に行くこと、それも公立の大学へということになりました。

アキは全く勉強してこなかったので、八軒が勉強を教えて後押しをしますということになりました。

 

第9巻・・・母の来校

母親が入学以来、久しぶりに農業高校にやって来ました。

学校の関係者と一緒に農高で生産したものをみんなで食べます。

その中で、八軒が友達と過ごしている様子を見て、子供の成長に目を見張りました。

再びベーコンを作ろうと盛り上がります。

先生に相談に行くと、飼育から解体して食べるまでの全工程を体験しようということになりました。

解体は隣にある大学で行われ、希望者は見学させてもらうことになりました。

解体シーンも割とリアルに描かれています。

生徒たちにとっては、首の動脈を切って放血する場面がきつかったようです。

 

農業高校の話④「農業高校からの進学」

農業高校からもたくさんの生徒が進学します。

私の勤務していた高校では進学と就職が半々ぐらいでした。進学先は大学・短大・専門学校等と多岐に渡っています。

進学する場合はほとんどが推薦です。 

漫画に出てくるアキのように推薦入試で国立大学の農学部に進む生徒もいます。

国立大学にはほとんど農学部あるので、農業高校からの生徒を結構たくさん受け入れてくれています。

もちろん推薦入試には、高校での成績(評定平均値)がまずもって良くなければなりません。

更に小論文や高校での活動なども評価されます。

そうした推薦入試を経て入学した生徒は普通科出身の生徒とは違い、早くから専門的なことを学んでいるので大学でも活躍しているようです。

 

第10巻・・・ソーセージ作り

農業高校には飼育している動物がいるので正月も関係ありません。

誰かが面倒を見ることになります。

八軒も動物の世話手伝いました。

正月が明け、注文していた豚肉3頭分が届きました。

これをベーコンとソーセージにしてみんなで食べるとともに販売もすることになりました。

八軒は今度はソーセージ作りに挑戦です。

農業高校は生産物を販売しています。

これは、自分たちが生産しているものを販売することで、消費者と触れ合うことと様々な声を聞いて今後の生産活動に生かしていくためです。

どこの農業高校もやっていることなのですが、販売の日は多くの方々が農業高校の農産品を求めて大賑わいです。

八軒は自分たちが作ったベーコンとソーセージを販売します。

値段をいくらにするのか、パッケージはどうすれば売れるのか、販売の実践を通じて多くのことを学んだようです。

特に農業高校産なら間違いないと言って買ってくれるお客さんの声を聞いて、これまで培ってきた信頼というブランドの重みを感じたようです。

 

第11巻・・・退寮

3年生が卒業の時期が近づいてくると、八軒も将来のことを考えるようになります。

そんな時に、仲間と会社を立ち上げて上を目指したいと考えだしました。

アキは進路の先生から推薦入試のことについて教えてもらいます。

大学の推薦入試は、調査書の評定平均値が全体で3,8以上、数学・理科・英語が4,3以上それと小論文試験、面接です。

現実の推薦入試もこのようなものです。

退寮の日に校長先生が「銀の匙」の話をしてくれました。「銀の匙」は子供が生まれると食いっぱぐれが無いようにとの願いからプレゼントします。

中には、毎年、誕生日になると一本ずつプレゼントする親がいます。

職人さんが魂を込めて作ったスプーンを毎年貰っていると、大きくなった時には一そろえ出来ます。

出来上がったものは子供の・家族・職人の歴史であり、一財産ともなります。

今あるものは誰かが積み上げたものを、使わせてもらっているということです。

 

第12巻・・・起業

事業のネタを話し合う中で、「蹄耕法」で廃牛に付加価値を付けるプロジェクトを始めることになりました。

アキは推薦入試の小論文対策を始めています。

ある先生は自分の夢である猟師になるため学校を辞めることになりました。

学生起業とか国立大学を目指すとか、生徒のチャレンジに背中を押されたようです。

豚の放牧を事業化するために先輩が社長で八軒が副社長ということになりました。

アキの家で協力してもらって準備を始めます。

さて結果はどうなるのでしょうか。

 

農業高校の話⑤「農業高校での生徒の成長」

農業高校の生徒たちは個性が豊かです。

「銀の匙」に描かれているように目的を持って入学してくる生徒もいますが、八軒のように中学校時代に自分に自信を失ってしまい、何となく入学してきたり、不登校気味であった生徒もいます。

しかし農業高校で学ぶことは中学校の延長ではなく、実学として実際に体を動かして会得する学びです。

それも日々命と向き合っていることから、机上では学ぶことのできない生きること生かされていることを身をもって体験できます。

その様な教育環境の中で、思わぬ気付きを得て、生き生きと何事にも積極的に取り組む生徒が生まれてきます。

中学校の時と比べて農業高校でホントに変化したと中学校の先生が仰っていたことがありました。

多分、進学校の生徒さんよりかは多様な家庭的背景の生徒が多いと思いますが、そのような中で、植物や動物と共に成長して立派に社会に巣立って行っているのです。

農業というものはそもそも動物や植物を育てるものなので、農業にたづさわっているとそれに伴って人も成長するものなのではないでしょうか。

残念ながら、少子化の影響で四国でも農業高校の統廃合が進んでいますが、農業高校の魅力をもっと多くの方に知ってもらいたいと願っています。

 

第13巻・・・インターハイ

インターハイに向けての北海道大会が始まりました。

アキが頑張って、2位となり、ついに念願のインターハイに出場することができました。

3年生最後の夏休みも終わり、2学期が始まります。

そんな時、東京に出稼ぎに行っている駒場から、突然、連絡が来て八軒に頼みたいことがあると言ってきました。

 

第14巻・・・アキの入試と八軒のピザ販売

東京に出稼ぎに行っている駒場は、八軒のお兄さんに勉強を教えてもらうことになりました。

最後のエゾノー祭が終わって、アキは推薦入試、八軒はばんえい競馬でのピザ販売の日になりました。

何とか黒字を確保することができ、アキも大学に見事合格していました。

社長の先輩が生産から販売まで6次産業化しなければならないと言い出しました。

そのためにも食品衛生管理者が必ず必要となるということで、八軒は大学を受験することになります。

 

第15巻・・・卒業

八軒は大学に合格することが出来ました。

4年後、八軒は駒場からロシアに来てくれという電話をもらいます。

駒場はシベリアの広大な土地で農業を始めていたのです。

そこで駒場はシベリアで豚を飼わないかと持ち掛けます。

 

エゾノーでは今年もピザ会をしています。

生徒が将来の夢を話していると、先生が八軒のことを語り始めました。

その話を生徒たちは目を輝かせながら聞いています。

八軒はエゾノーに確かな種を蒔いていったようです。