今週のお題「眠れないときにすること」
「眠れないとき」があったので、以前の記事を読み直して、リライトした記事を書いてみました。先週の【お題】である「肉」に関連したものです。
はじめに
「銀の匙」(荒川弘)は農業高校御用達の漫画です。
都会育ちの農業とは縁もゆかりもない主人公の八軒勇吾が、農業高校に入学してからの成長の様子を描いています。
農業高校がどのような所かを知るには、うってつけの漫画だと思います。
長いこと農業高校で勤務していたので、マンガを読みながら「あるある」と一人でうなずきながら、楽しく読ませてもらいました。
食肉処理場を見学させてもらったことがあります
私は生徒たちと一緒に、実際に食肉解体処理場で牛の解体現場を見学させてもらったことがあります。
まさに命をいただく現場です。
飼育している家畜が生産者として、どのように解体処理されているかを知ることはとても大切です。
残念ながらこうした食肉の解体に関しては、何かしら偏見があるようにも思います。
そのような偏見を無くすためにも食肉解体の実際を見てもらいたいと一般公開している処理場で見学させてもらいました。
処理場の畜魂碑に花を手向け、場内に案内してもらいます。
2階の見学場所から内部を一望でき、屠畜から解体までの一連の流れを見学できるようになっていました。
一連の作業は極めて効率的に何よりも衛生的に分担して行われています。
最後に私たちがよく見る枝肉になって、セリにかけられることになります。
印象に残ったことは、作業をされている方々の手際の良さと衛生に対する意識の高さでした。
たくさんの獣医さんがいて、これでもかというぐらい繰り返して検査をしています。
食肉処理に関わっている方々は、美味しいだけでなく、安心で安全なお肉を消費者に届けるためのプロフェッショナルなお仕事をされていると感じました。
家畜を屠(ほふ)ることに目をつむって、美味しい美味しいといって食べるだけでなく、このような食肉処理の実際を正しく知ることができて、とても貴重な体験をさせてもらいました。
子豚の出産に立ち会いました
母豚は一度に10匹前後の子豚を出産します。
何時間もかけて少しずつ出てくるようです。
分娩は夜が多いそうなので係の先生もそれに合わせています。
子豚が生れ落ちると薄い膜で覆われているので、それを取り除きます。
牙が少し生えているので、ペンチでこれも切り取ります。
ある時、難産だったようで女性の先生が呼ばれました。
母豚の子宮に手を突っ込んで引っ張り出すためです。
男性の腕では大きすぎるので、豚に負担がかかりすぎるということで女性の方がよいそうです。
豚への種付けは人工授精で行っているようですが、雄豚にも交配させていました。
雄豚は体が大きくて迫力があります。
この雄豚が雌豚の背後からのしかかって交配させます。
専門の先生がサポートするのですが、なにせ大きな豚を相手ですので、一歩間違えると大けがに繋がる危険な作業です。
豚の交配とか出産を見ることは、なかなか出来ないことなのですが、直接見ることが出来てとても勉強になりました。
農業高校の文化祭
農業高校の文化祭では栽培した作物とか加工食品の販売があります。
野菜や果物・草花や加工したみそや缶詰など、農業高校で生産したものを地域の方々のために販売します。
そのため、とてもたくさんの地域の方々が学校に来られます。
毎年のことなので地域の方々も楽しみにされておられるようです。
周りの道路はかなり渋滞するし、販売している品を買い求める人々で長い行列が出来るし、その日は生徒も先生方もてんてこ舞いの忙しさです。
マンガの主人公のようにあれやこれやと係を重複している生徒もいて準備の段階から忙しく働いています。
マンガで描かれている文化祭のように、生徒はクラスごとに焼き鳥やポップコーン、金魚すくいといった屋台も出したりします。
やはり食べ物関係が多かったと思います。
農業高校にとっては地域の方々を巻き込んだ一大行事です。
農業高校からの進学
農業高校からもたくさんの生徒が進学します。
私の勤務していた高校では進学と就職が半々ぐらいでした。進学先は大学・短大・専門学校等と多岐に渡っています。
進学する場合はほとんどが推薦です。
漫画に出てくるアキのように推薦入試で国立大学の農学部に進む生徒もいます。
国立大学にはほとんど農学部あるので、農業高校からの生徒を結構たくさん受け入れてくれています。
もちろん推薦入試には、高校での成績(評定平均値)がまずもって良くなければなりません。
更に小論文や高校での活動なども評価されます。
そうした推薦入試を経て入学した生徒は普通科出身の生徒とは違い、早くから専門的なことを学んでいるので大学でも活躍しているようです。
農業高校での生徒の成長
農業高校の生徒たちは個性が豊かです。
「銀の匙」に描かれているように目的を持って入学してくる生徒もいますが、主人公の八軒のように中学校時代に自分に自信を失ってしまい、何となく入学してきたり、不登校気味であった生徒もいます。
しかし農業高校で学ぶことは中学校の延長ではなく、実学として実際に体を動かして会得する学びです。
それも日々、命と向き合っていることから、机上では学ぶことのできない生きること、生かされていることを身をもって体験できます。
その様な教育環境の中で、思わぬ気付きを得て、生徒は生き生きと何事にも積極的に取り組むようになってきます。
中学校の時と比べて、農業高校でホントに変化したと中学校の先生が仰っていたことがありました。
多様な家庭的背景の生徒が比較的に多いと思いますが、そのような中で、植物や動物と共に成長して立派に社会に巣立っているのです。
農業というものはそもそも動物や植物を育てるものなので、農業にたづさわっていると、それに伴って人も成長するものではないでしょうか。
残念ながら、少子化の影響で四国でも農業高校の統廃合が進んでいますが、農業高校の魅力をもっと多くの方に知ってもらいたいと願っています。
メロン栽培の様子
農業高校ではメロンも栽培しています。詳しくは、こちらをご覧ください。↓↓↓