はじめに
徳島県三好市は、江戸時代より葉タバコの生産が盛んに行われており、「阿波刻み」と呼ばれる、キセルやパイプ用の刻みたばこの産地として知られていました。
火付きの良い「阿波刻み」は、瀬戸内海から北前船によって北海道にもたらされ、販路が拡大されていきます。
三好市池田町には、刻みたばこを生産する業者の家々が立ち並ぶ、豪華な装飾を施した防火壁「うだつ」を上げた屋敷が多く建てられるほど繁栄しました。
最盛期には100軒以上の刻みたばこ業者がいたといわれており、旧真鍋家住宅もそのうちの一つです。
阿波池田たばこ資料館
阿波池田たばこ資料館
富の象徴である「うだつ」のある旧真鍋家住宅は、かつてのたばこ産業繁栄の象徴として三好市指定有形文化財とされており、『阿波池田たばこ資料館』として一般に開放されています。
玄関
見世の間
玄関を入ると、風情のある土間や上り口があります。
通りの間
見世の間を抜けて、隣にある通りの間から上がっていきます。
表座敷「人形浄瑠璃~勘縁(かんろく)の部屋~」
地元出身で世界的に活躍している「人形遣い勘縁」さんの部屋です。
資料館への廊下
中庭
廊下から中庭を見ながら資料館へ行きます。
たばこ資料館
資料館には、帳簿類や昔のちらし広告、喫煙具、タバコの葉といった実物をはじめ、製造用機械の模型など、たくさんの資料が展示されています。
1F展示室
かんな刻み機
1800年、池田の中村武右衛門が、北海道のコンブ切り機をヒントにして「かんな刻み機」を考案しました。
これによって手作業に比べて、大幅な量産が可能になりました。
池田町のたばこの歴史
江戸時代から続くたばこの生産でしたが、1904(明治37)年になると日露戦争の戦費を賄うために煙草専売法が公布され、国によってたばこの生産が行われるようになりました。
翌年には四国で初めての専売局による池田たばこ製造所が開設されています。
以来、専売公社によってたばこ生産が続けられていましたが、1990(平成2)年に日本たばこ産業池田工場が閉鎖されたことで、この地における、たばこ生産は終了しました。
この時に池田町の人口が大きく減少したということです。
2F展示室
旧真鍋家住宅
100年を超えるたばこ業者の住宅であり、刻みたばこの製造所だけでなく、美しい中庭や書院造りの離れ座敷を有する豪華な造りの住宅で、当時の繁栄を偲ぶことができます。
趣のある庭や座敷があるので、結婚式や成人式の前撮り、コスプレ撮影などで利用することができるそうです。
離れ
10畳二間の広くて豪華な離れの建物があります。
離れ座敷
木枠のガラス窓
ガラスが珍しかった時代のもので、歴史を感じます。
おわりに
かつての面影を偲ぶことができる「うだつ」のある家が点在する静かな山間の街に、古い趣のある「たばこ資料館」がありました。
池田町の歴史を感じることができる施設として多くの人に見てもらいたいと思いました。