はじめに
徳島県の貞光町は、現在、半田町・一宇村との合併によってつるぎ町となっています。
貞光町の中心は、貞光川が吉野川に流れ込む付近に立地している谷口にある集落で、剣山への登山道の入り口でもあります。
貞光町の歴史
古くは忌部氏の根拠地として開け、楮や麻の生産が盛んな農業地域でした。
江戸時代には、たばこ産業が成立して全国に販路が拡大されました。
昭和の中頃まで、商業と交通の要衝として栄えており、脇町と並んで二大商業地を形成していました。
卯建(うだつ)の町「貞光」
「うだつ」とは防火用の土壁のことで、隣の家との境に取り付けられたものです。
「うだつ」を造るにはかなりお金がかかるので、裕福でないと設置することができません。
「うだつが上がる」という言葉は、お金持ちであることを意味しており、立派な「うだつ」のある家が軒を連ねている町は、繁栄している町であることを物語っています。
「うだつ」といっても単層のもの、2層のものといった様々な種類があります。
貞光の町並みでは、こうした多くの種類の「うだつ」を見ることができます。


鰻絵(こてえ)
「うだつ」に鰻(こて)で漆喰細工を施しています。
鰻絵といい、長寿や防火を願って亀をあしらったものや魔よけ・縁起物の松と鶴をあしらったものなどがありました。


織本屋
織本屋は貞光の古い町並みの中で、代々酒造業を営んできた商家です。
元の所有者からつるぎ町に寄贈され、保存のため修復されました。
古い2層うだつを持つ建築で、かつての貞光の繁栄を偲ぶ建築物として、無料で一般公開されています。
座敷
座敷から見る庭
旧永井家庄屋屋敷
町並みから一歩奥へ入った所に、1791年に建築された茅葺き屋根の庄屋屋敷があります。
築地塀に囲まれた550坪の広大な敷地に母屋・蔵をはじめ座視観賞式の鶴亀蓬莱庭園を有しています。
庄屋としての特別な格式を備えた間取りを現在に伝えている貴重な歴史文化遺産として、町の有形文化財に指定されています。
正面入口
母屋
座敷
別棟にある資料館
資料館2Fには多くの貴重な文化的遺物が保存されています。
江戸時代の駕籠
人力車
おわりに
古い町並みや建物を保存することは、そこに住んでいる住民の皆さんにとっては、とても大変なことだと思います。
しかし、貞光では特に「うだつ」の歴史的な価値を後世に伝えるために、多くの建物が保存修復されており、かつての繁栄を偲ぶよすがとして、訪れる人々の目を楽しませてくれています。
いつまでもこの町並みを大切に、更に発展させてほしいと思います。
追記:旧永井家庄屋屋敷の庭に、きれいな紅白の花が咲いていました。