はじめに
高知市には「地球33番地通り」という、気宇壮大な名称のついた通りがあります。
さすが坂本龍馬を輩出した地だけに、土佐の人々は雄大な構想をもつ気質が受け継がれているものだと感心してしまいます。
すぐ近くには「藁工(わらこう)ミュージアム」があり、昔の風情を残している趣ある建物に再生されミュージアムになっていました。
「藁工ミュージアム」とは
障害者就労についての活動をしている「ワークスみらい高知」が2011年に開設したミュージアムです。
かつて、ワラが保管されていた倉庫の建物を改修しているので「藁工」というネーミングにしているようです。
水切り瓦があり、土佐漆喰塗の白壁がとても美しい歴史のある建物が再利用されています。
ここでは年に4回ほどの展覧会やワークショップ、専門的なレクチャーなども行われています。
福祉とアート、地域とアートをつなぎ、誰もが多様なものとつながることのできる創造的な場となること、そんな美術館を目指しているということでした。
地球33番地とは
東経133度33分33秒・北緯33度33分33秒の地点の愛称です。
3が12個も並んでいます。
経度と緯度の数字が並んでいる所は、海や砂漠の中に位置していることが多いということです。
これだけ数字が並んでいるのも珍しいのですが、人が気軽に行ける場所にあるのは、もっと珍しいそうです。
記念のモニュメントが江ノ口川に建っています。
変遷
旧日本測地系を基にした位置
1962(昭和37)年に、高知ロータリークラブがコンクリート製のモニュメントを建てています。江ノ口川の南岸にあります。
60年近く前に、3並びの経度・緯度に注目していたんですね。
1993(平成5)年、正確な場所に記念碑を建てようということで、江ノ口川の北岸から入っていける水面上にシンボル塔が建てられました。
世界測地系を基にした位置
2002(平成14)年に、経度・緯度の位置が世界測地系を基にするようになりました。
それにより、3並びの経度・緯度は400mほど南東にある高知市立昭和小学校の東南角地にある住宅のあたりになってしまいました。
しかし、高知の人々は従来のポイントを地球33番地として大切にしています。
地球33番地到達証明書
江ノ口川南岸のモニュメントの目の前にある「はあと33番地」で、地球33番地実行委員会が発行している到達証明書をいただけます。
「はあと33番地」は重度重複の障がいのある人たちが、地域の中で暮らしていくために特定非営利活動法人オープンハートが運営している施設です。
地元の応援
1996(平成8)年に近くの道路が「地球33番地通り」と名付けられました。
近くの病院は「クリニック地球33番地」と名付けられています。
マンションの名前も「カーサ地球33番地」です。
おわりに
高知の人たちは、旧日本測地系から世界測地系に場所が移っても、従来のモニュメントがある場所を地球33番地として大切にしています。
3月3日を「地球33番地の日」と設定して、毎年、記念式典が盛大に開催されているようです。
高知の人々の、この場所に対する思い入れの深さを窺うことができます。
「地球33番地」という壮大な名称にも、土佐の豪快な気質や茶目っ気のある人々の愛嬌がよく表れていて、とても素敵な名称だと思いました。
すぐ近くには、土佐の伝統的な建物を利用した「藁工ミュージアム」があり、福祉や地域の関係の中で相互理解を深める拠点となっています。
「地球33番地」という特徴のある場所から、すべての人がアートを通してお互いの理解を深めることができれば素晴らしいことだと思います。