はじめに
四国霊場八十八ヶ所には「大日寺」が、徳島に2カ寺、高知に1カ寺の計3カ寺あります。
徳島県にある4番札所「大日寺」のご本尊は大日如来さま、13番札所「大日寺」は十一面観音菩薩さま、そして高知県の28番札所の「大日寺」は大日如来さまとなっています。
同じ「大日寺」ですが、それぞれに特徴があって趣のあるお寺です。
28番札所「大日寺」は田園風景の広がる平野から少し里山を上った三宝山の麓に位置しています。
周りを木々に囲まれた森の中にひっそりと静かに法灯を守っているお寺でした。
境内
山門
緑に囲まれた風情のある山門をくぐり、階段を上がった所に本堂があります。
本堂
平成9年に再建された本堂は、釘を使わずに造られています。
本堂の後ろの続き棟である収蔵庫に、本尊の大日如来坐像が収蔵されています。
行基作といわれていますが、実際には平安時代後期の寄木造像です。
脇仏の聖観音菩薩像は空海の甥にあたる智証大師である円珍の作といわれています。
いずれも国指定の重要文化財ですが、非公開となっています。
大師堂
大師像は2代土佐藩主山内忠義が寄贈したといわれています。
鐘楼
縁起
寺伝によれば8世紀中ごろ、聖武天皇の勅願により、行基が大日如来像を刻んで祀ったことが始まりだとされています。9世紀初めには空海が楠の大木に爪で薬師如来像を彫って寺を復興したといわれています。
16世紀、土佐藩の祈願所となり栄えましたが、明治初期の神仏分離令によって廃寺となってしまいます。この時、本尊は大日堂と改称した本堂に安置していたので助かり、1884(明治17)年に再興されました。
爪彫薬師堂
空海が楠の立木に薬師如来を彫ったといわれていましたが、その楠は明治初年に台風で倒れてしまいます。
倒れた楠の跡地には、楠を霊木として安置している堂が建立されました。堂は老朽化のため2014年に建て替えられています。
爪彫薬師は首から上の病に霊験があるといわれています。
祈願が叶なった折には「願ほどき」のために穴の開いた石を奉納するという習わしがあります。
近くの岩窟からは弘法大師の御加持水と呼ばれる清水が湧き出しています。
おわりに
森の中にあって、まるで侘び寂の世界のような環境の中に、静寂に包まれた境内がありました。
建物は比較的新しいものでしたが、整然とした配置の中で落ち着いた雰囲気を醸し出しています。
古い由緒や歴史もあり、多くのお遍路さんを迎え入れるのにふさわしい信仰の場だと思いました。