はじめに
浄土寺の背後には牛峰山(うしのみねざん)があり、前面には松山市の市街地が広がっています。ちょうど山と民家の間に位置するお寺です。
10世紀の半ばに浄土寺に滞在して布教をした、空也(くうや)上人と深い縁があることから空也上人ゆかりのお寺としても有名です。
空也上人は「南無阿弥陀仏」を唱えながら全国各地をまわり、浄土教信仰の先駆者とされている僧です。
浄土寺では、正岡子規による空也上人を詠んだ句が石碑となって建立されています。
「霜月の空也は骨に生きにける」
境内
仁王門
祈願成就を願う、たくさんの千羽鶴が掛けられていました。
仏足石と弁財天
仏足石は外側と内側が綺麗に色違いとなっている石に刻まれていました。
本堂
国の重要文化財に指定されている、和洋と唐様が折衷した室町時代の代表的な建物です。
本尊は釈迦如来像で、重要文化財の空也上人立像も堂内に安置されています。
また、本堂内に置かれた厨子には、大永5(1525)年の年号のある落書きがあるそうです。
大師堂
阿弥陀堂(右)愛染堂(左)
阿弥陀如来さまと愛染明王さまが、それぞれに祀られています。
七福神の石像
納経所の前に七福神の石像が並んでいます。
納経所
縁起
寺伝によると、8世紀半ばに孝謙天皇の勅願を受けて恵明(えみょう)上人が開創し、行基によって彫られた釈迦如来像を祀ったといわれています。
当初は法相宗でしたが、後に空海(弘法大師)が真言宗に改宗しました。
平安時代中期に、空也がこの寺に滞在して布教に努めています。
15世紀初めに兵火で焼失してしまいましたが、15世紀末、伊予国の戦国大名である河野通宣(みちのぶ)によって再建されました。
現在の本堂はその時のものです。
おわりに
重要文化財の本堂をはじめとして、長い歴史やいわれを大切に守っているように感じられました。
里にあるお寺として地域の人々とのかかわりを大切にしながら、優しくお遍路さんたちを迎え入れている様子がうかがえるお寺でした。